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プロフィール
畑澤聖悟(はたさわせいご/劇作家)
1964年生まれ。「劇団北の会」「劇団漫金堂」「シアター・ル・フォコンブル」「弘前劇場」を経て、2005年、演劇プロデュースユニット「渡辺源四郎商店」を設立。ラジオドラマの脚本家という顔も持つ。 渡辺源四郎商店 98年以降、脚本家・演出家として年1~2のペースで様々な賞を受賞。 これまでのおもな受賞歴: 放送批評懇談会ギャラクシー大賞ラジオ部門最優秀賞/平成11年度日本民間放送連盟賞ラジオ娯楽番組部門最優秀賞/平成11年度文化庁芸術祭大賞/平成12年度日本民間放送連盟賞ラジオエンターテイメント部門優秀賞/平成13年度日本民間放送連盟賞ラジオ教養番組部門優秀賞/平成14年度・15年度日本民間放送連盟賞ラジオエンターテイメント部門優秀賞/日本劇作家大会2005熊本大会・短編戯曲コンクール最優秀賞/平成17年度全国高校演劇発表大会最優秀賞・文部科学大臣奨励賞・創作脚本賞 その他のジャンル
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8月23日(土)
演劇部の顧問をやって今年で12年目であるが、一度だけ生徒にぶち切れた事がある。かなり前のことなのでどの大会での出来事だったか忘れた。ロビーに設置されていた意見ボード、ある学校のコーナーに、 「意味不明、つまらなかった」 と、書かれた文字を見つけたのである。「青森中央」の署名があり、ウチの部員が書いたモノに違いない。ちょっと調べたらすぐに下手人は割れた。 「馬鹿野郎!」 と怒鳴った。 「恥さらしッ、何様のつもりだッ!」 と怒鳴った。 その後、機会を見つけて部員全員集めて説教をした。 ひとつ。観た芝居について部員同士で自由に語るのはいい。しかし、それを公の場に晒すのはどうか?我々はプロではないし、演劇を学ぶ高校生である。他校演劇部は同じココロザシを持つ仲間であるはずである。その思いやりはないのか?同じ苦労をしてる者同士なら、まずは「お疲れ様でした」と言うべきではないか。 ひとつ。自分が同じことを言われたらどう思うか?それを想像することは出来ないのか? ひとつ。批評をする者もその批評によって批評されることを忘れるな。批評にはその人間の演劇的見識の広さ狭さ、人間性、品格が現れる。自分の批評を晒すということは自分の馬鹿さ加減を晒すことでもある。「意味不明」というからには芝居を理解できなかったということであろう。それは作品がショボイからなのか?絶対か?じゃあ、オマエは今までに何本の芝居を観た?テレビドラマやアニメは毎日観てるって?じゃあ、芝居は月に何本観てる?週に何本観てる?カップヌードルしか食べたことがない人間が、 「しおもチリトマトもいいけど、一番美味いのはミルクシーフードだなあ」 と語るのは正しい。しかし、そいつはぬか漬けや寿司の味を理解できるのか?フォアグラやトリュフの味を理解できるのか?カップヌードルしか食べたことのない人間が、フォアグラを食べて、 「こんな味はワカンナイ。最低。ミルクシーフードヌードル最高」 と、言う。これは恥ずかしい。少なくとも私はそう思う。感想を持つのはいい。身内でこっそり話すのも許す。それも勉強だろう。でも不特定多数の人間の前に晒すな。せめて、ぬか漬けも寿司もフォアグラもトリュフも食ってからにしろ。 ひとつ。上から目線で芝居を観るな。「つまらない」からといって本当に学ぶべき所はないのか?本当にオマエ(オマエたち)は全ての分野で優れているのか?「つまらない」からといってバッサリ切り捨てるな。なぜ「つまらない」のか考えろ。全精力を傾けた。工夫もした。死ぬほど練習した。だけどつまらない。そんなことは普通にある。自分のこととして考えよ。それは次の作品で自ら陥るかも知れない落とし穴なのである。若いモノツクリが他人から何も学ばないのは悲しいことだ。他人の芝居をけなしてばかりの役者はうまくならない。よほどの天才であれば別だが、イチローは他にイチローが居ないから天才なのである。それともおまえは天才なのか?イチローなのか?じゃあ、すげー芝居を作って見せてみろ。 ひとつ。「意味不明、つまらなかった」その傲慢なモノの言い方の、上から目線の根拠はなんだ?自分たちはゼンコク行ったことのあるメーモンだとでも言うのか?それにしたって、99年「生徒総会」で全国入賞したのは先輩たちであってオマエたちではない(05「修学旅行」の前だった)。先輩の実績は誇りに思うべきであるが勘違いしてはいけない。それはオマエたちの実力ではないのだ。 ・・・と、まあ、こんなことを話した(当時はミルクシーフードヌードルはなかったけれど)。あと、顧問としてこれ以来肝に銘じたのは、大会の時、部員の前で芝居の感想を言わないことである。部員は顧問の影響を強く受ける。 「今の芝居はつまらなかった」 と私が言うと、部員は、 「今の芝居はつまらない」 ことを強くインプットするだろう。全否定である。それはその芝居から彼らが何かを学ぶ機会を奪ってしまうということである。演劇部顧問の使命は部員にいい演劇体験をさせることだ。よき表現者、よき観客を一人でも多く輩出することだ。彼らが将来、フラットに芝居を観、芝居を楽しめるようにしてあげなければいけないのではないか。 と、こんな昔のことをいまさら書いたのは、先日の全国大会について検索していたら、ある高校演劇部のブログに行き当たり、その内容に唖然としたからである。その演劇部は遠隔地から関係者の運転する自家用車に乗って桐生入りしたらしい。素晴らしい熱意である。観劇後、部員たちで感想会なるものを開催したらしい。その内容が書かれてある。各演目の評論には共感できるところも少なくない。しかし、 ・工夫アイデアいまいち。 ・最低最悪の本。 ・最初だけみてつまらないと分かる。幕開き五分で面白いかどうかわかる。 ・無思想にすらなっていない。ワルノリ芝居。 ・歌うたうのならもっと練習して。 ・本が駄目。ぐちゃぐちゃ。 という、バッサリな感想を堂々と載せている。末尾に全国大会全体の感想があり、目を疑った。 全体にこれといった作品はなく小粒。 ほとんどの作品が毒や怒りを持たず思想がない。すでに社会であたりまえの正義を振りかざしたものや現実につながらないものばかり。そこからは人間すら見えてこない。 (中略) 知的好奇心、欲求をみたすものがない。 私は「暮れないマーチ」のムーブメントに衝撃を受けた。どうやったらあんな動きを高校生にさせられるんだ。「りょうせいの話」の王道ギャグに大いに笑った。笑える芝居には笑える理由があることを強く感じた。一見くだらないやりとりに緻密な計算を見た。その他の出場校にも、学ぶべき点は多かった。瞠目した。このブログを書いた部員たちはわざわざ遠くから来たのに何も学ばなかったのか。「欲求をみたすものがない」と言い切る彼らの作る芝居がどのようなものか、是非観てみたい。イヤミでなく、心底そう思う。芝居の感想の他に「運営カチカチ」と大会運営を批判したくだりが酷い。あれこれ文句を言うのはいい。しかし、ごくろうさまのひと言はないのか。夏休みとその前の数ヶ月を犠牲にして、運営にあたった彼らの労苦を想像することは出来ないのか?何のために芝居やってるんだ。審査員や生徒講評委員会については、 審査員、ほめるが9割駄目だし1割。 生徒講評委員会、小学生の作文マニュアル。 生徒がまるくおさまってどうするの。なんでも言えばいいのに。 とのこと。つまり、なんでも言えることは偉いことであり、全てに優先されるべきであるというのか。こうしてなんでも言ってる自分たちの行いは正しく、立派でカッコイイことだというのか。確かに、 「なんでも言う」 ことは大事である。とても大事である。しかし、何でも言えば、それでいいのか。なんでも言う前に考えることはないのか。とても大事なことを見逃しているのではないか。 高校演劇に関わる人間としてとても恥ずかしく思ったのである。 そして、とても悲しかった。
by nabegen4ro
| 2008-08-23 14:33
| 演劇
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